寝る前に子供たちと読む絵本を、講談社絵本新人賞佳作を受賞した経歴を持つ管理人が、
制作側の視点を混ぜて紹介していきます。
小道具使いが絶妙!【いいもうとのにゅういん】
さく    筒井頼子
え     林 明子
出版社   福音館書店
発行年月日 1983年2月1日


これも、「はじめてのおつかい」「あさえとちいさいいもうと」を描いた筒井頼子さんと林明子さんのコンビの作品。

「あさえとちいさいいもうと」の「あさえ」といもうとの「あやちゃん」が登場します。

「1ページ目より最後のページの方が、主人公が成長していなければならない」という絵本のひとつの原則がよく分かる形で描かれています。

全体を通して、一つの「キーアイテム」としてとても上手に使われているのが、あさえの大事にしているお人形「ほっぺこちゃん」です。

幼稚園から帰ってきたあさえが、「ほっぺこちゃん」が部屋にないことに気がついて、

「また、あやちゃんの いたずらだ。
あやちゃん、あたしの ほっぺこちゃんを
かえしなさい!」

と大声をあげるところから始まります。

ところが、「あやちゃん」は具合が悪く、お母さんに背負われて病院へ行ってしまいます。
もうちょうの手術をすることになったのです。

最後にはこの「ほっぺこちゃん」をお見舞いとして病院へ持っていって、あやちゃんにあげてしまうことで、あさえの一晩の成長が表現されるわけですが、その不安な一日を乗り切るためのいろいろな場面に「ほっぺこちゃん」が登場するのです。

おともだちも帰ってしまって、ひとりでおとうさんの帰りを待つことになったあさえが、嵐が怖くてベッドにもぐりこむときも、「ほっぺこちゃん」と一緒です。

もぐりこんだ布団の隙間から、「ほっぺこちゃん」のお下げ髪の端っこだけのぞいています。

「おとうさんと、ふたりだけのゆうごはん」のときも、余った2つの椅子の一つに、「ほっぺこちゃん」が座っていて、ちゃんと前にほっぺこちゃんの分も、ごはんが用意されています。

不安なときはいつも頼りにしていた「ほっぺこちゃん」を手放すことで、あさえの成長は一層強く描かれることになります。

それから、いつも感心するのが林明子さんの描写力です。

「はっぱのおうち」でも書いた、表情や仕草はもちろん、背景となるリビングルームのほどよい生活感といい、あさえとお友達の「ひろちゃん」が遊んでいるときの、おもちゃにしているもののといい(そうそう、子供って、こういうその場にあるちぐはぐなもので、ちゃんと遊びを組み立てるんですよね)、あさえがあやちゃんのお見舞いのために折っている折り紙といい、、手紙を入れる封筒の模様といい、ほんとにリアリティ漂っています。

それから、部屋に置いてあるものも、状況を表すのに上手に使われています。

最初のページできちんとサイドテーブルに置かれていた民族衣装のお人形は、あさえとひろちゃんのおままごとに使われているし、窓際に置いてあったクマノミの置物は、「きゅうに、そらが くらくなりました。」という場面のときに、嵐の前触れの風に煽られたカーテンで、ソファに落ちています。

全てのページで矛盾がありません。これも昔編集さんに言われた鉄則です。

ただ、1983年という出版年に、今との時代の差を感じざるを得ません。
というのも、あさえはひろちゃんと「二人だけ」で幼稚園から帰ってくるし、お母さんはあさえとひろちゃんを「残して」病院へ行ってしまうし、ひろちゃんは雨が降りそうだからと、「ひとりで」帰っていってしまいます。

こんなこと、今の時代ではあり得ません。ウチの息子が幼稚園のころは、子供だけで帰ってくるなんて考えられなかったし、小学生になった今でも、行き帰り一人ということはありません。行きは集団登校だし、帰りは必ずお友達か親、または知り合いのおじさんと一緒です。

学校も子供を一人にすることに、とてもピリピリしています。

絵本だからこそ感じられる子供の生活環境の違いです。

また絵本だからこそできるおもしろい発見もあります。
あさえがあやちゃんの病院の玄関に立つ場面です。大きな病院の廊下の奥でジュースを買っている子をよーく見ると…なんと「はじめてのおつかい」に出てくる「みいちゃん」です!

同じく「はじめてのおつかい」でたばこを買っていく「めがねおじさん」も、松葉杖をついて、看護婦さん(今は看護士さんですね)にお薬か何かの説明をされています。

この筒井頼子&林明子シリーズには、こういうイタズラがたくさん隠れているんです。
探すのがとっても楽しいですよ。

| - | 05:58 | comments(48) | trackbacks(27) |
「秘密基地願望」と「描写力」で魅せる【はっぱのおうち】
タイトル: はっぱのおうち
さく  : 征矢清
え   : 林明子
出版社 : 福音館書店
発行年 : 1985年4月1日 年少版・こどものとも発行


これはもう、「子供の夢」そのものですね。
誰でもあるでしょ。自分だけの基地が欲しいと思ったこと。

これはその「基地願望」を見事に描いてくれている作品なので、絶対子供たちがくいつくな、とみてこっそり図書館から借りてきておいたのですが、大当たりでした。


小さな女の子「さち」が庭で遊んでいると、雨が降ってきます。


「でも へいき。さちには かくれる おうちが あるんだから」


「さち」は葉っぱが生い茂った小さな空間に潜り込みます。


この部分、全然「文章」としては説明していないんですが、葉っぱの空間に「さち」がちょこなんと座っている絵で全て納得してしまいます。

しかもこの絵をパッと見せられたときの羨ましさと言ったら!
「そうそう、こんな基地がほしかったのよー!」
まさに「言葉にできない」といった感じです。


これが「絵本」なんですね。

「絵本は文章に挿し絵をつけたものじゃなくて、絵だけ追ってもも言ってることが分かるくらいの構成にしなければいけないんだ。」

昔、講談社絵本新人賞を狙っていたときに、編集者さんに何度も言われたことです。

「何とかして絵本作家になりたい!」と焦っていたその頃は、3割ぐらいしか分かっていなかったような気がしますが、今こうして何の気負いもなく、子供たちと絵本を眺めていると、当事の編集さんの言葉が、とっても良く分かります。


絵を描いた林明子さんは、「はじめてのおつかい」「あさえとちいさいいもうと」等、本当に「うまい」絵本を描く人です。

「描写力」なんて難しい言葉は使いたくないのですが、ほんとーにニュアンスを捕らえるのがうまい!

特に子供の表情と仕種。

喜び、不安、驚き、とまどい…

まさに子供のそれです。
顔のつくりは違っても、うちの3歳の娘と同じ「表情」同じ「仕種」。
絵が止まってないんですね。


これだけ描き分けられれば、なるほど、文章は要らないくらいです。


でも「ぶん」を書かれた征矢清さんも負けてはいません。
虫たちが「はっぱのおうち」に集まってきたところで、

「みーんな、おなじうちの ひとみたい」

そうそう、子供は「家族」なんて言葉、使いません。
「おなじうちの ひとみたい」なんですね。

子供たちの心に、そして大人の中の「子供」の心に、グッとくる「ひみつの基地」のおはなしです。



| - | 21:38 | comments(15) | trackbacks(2) |
形式美の向こうに陰りが見える【ゆきのひのうさこちゃん】
タイトル:ゆきのひの うさこちゃん
ぶん・え:ディック・ブルーナ
やく  :石井桃子


誰もが知ってる「うさこちゃん」。今は「ミッフィー」ですね。

絵本には「動きのある絵」「動きのある線」が重要な要素を占めますが、この「うさこちゃん」シリーズほど「動きの無い」絵本もあまり無いでしょうね。

1ページ1ページが完成されたデザイン画として並べてある感じです。


よく編集さんに「すごく上手な絵を並べても、絵本にはならないんだよ」と言われましたが、そういった意味ではあまり絵本の特性を活かしていない絵本とも言えるかもしれません。


大御所ディック・ブルーナにそんなことを言っては、全世界から反感買いそうですが、
実はわたし、はじめ(高校生のころかな)はこの「デザイン的」な絵本に憧れていたんです。


だって、どこから見ても美しいですもの。センスよく置かれた色、それを引き締める一定の太さの黒い線。


日本では「カワイイ」代表のミッフィーですが、ゴタゴタ、グチャグチャした人間のココロをすぱっと切り捨てた、むしろ都会的なスマートさが感じられる絵本だと私は思うのです。


この線を決めるために、ブルーナは100回くらい描きなおすのだと、やはり編集さんに言われたことがあります。


そんなに細心の注意を払って描いた線でも、よーく見ると、ちょっとささくれていたりして、完璧に一定の太さではないんですね。


今なら「イラストレータ」などのパソコンソフトを使えば、完璧に一定の太さ、左右対称の「うさこちゃん」が数分で描けるのに。


ほんとに「うさこちゃん」ほどパソコン向きの絵はないと私は思っっています。実際、最近の「ミッフィー」は完璧な線で描かれていて、おそらくパソコンで描いているんだろうな、ということが想像できます。


でも、細心の注意を払って、「機械で描いたような」線を追求した「うさこちゃん」であるにもかかわらず、わたしはブルーナが手で描いた、ちょっといびつでささくれた線の昔の「うさこちゃん」のほうに惹かれます。


「機械のように正確にかこうとした」意志のようなものが伝わってくるからでしょうか。
なんとなく、今の「ミッフィー」にはない魂のようなものを昔の「うさこちゃん」に感じてしますのです。


「人間世界のゴタゴタ、グチャグチャを抱えながらも、何でも無いフリをしてポーカーフェイスを貫き通す、キザな美学のようなものを、ちょっとささくれた線の「うさこちゃん」に感じてしますのです。

ちょっと陰りがあるとでもいいましょうか。(おそらくそこまで考えて「ゆきのひのうさこちゃん」を読んでる物好きは私ぐらいだと思いますが…)


パソコンで描かれた今の「ミッフィー」はやっぱり「カワイイ」の対象でしかない気がします。


今回は線の話ばかりしていて(しかも暴走しすぎて)、あんまり絵本としての「ゆきのひのうさこちゃん」について語れませんでした。

機会をみてまた「うさこちゃんシリーズ」をとりあげたいと思っています。



| - | 22:33 | comments(12) | trackbacks(11) |
おしゃべりな たまごやき
タイトル:おしゃべりなたまごやき
| - | 07:42 | comments(10) | trackbacks(7) |
ろくべえ まってろよ
タイトル:ろくべえ まってろよ
作   :灰谷健次郎
絵   :長 新太
出版社 :文研出版
出帆年 :1975年8月1日
| - | 07:31 | comments(14) | trackbacks(3) |
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