2006.09.14 Thursday
小道具使いが絶妙!【いいもうとのにゅういん】
さく 筒井頼子
え 林 明子
出版社 福音館書店
発行年月日 1983年2月1日
これも、「はじめてのおつかい」「あさえとちいさいいもうと」を描いた筒井頼子さんと林明子さんのコンビの作品。
「あさえとちいさいいもうと」の「あさえ」といもうとの「あやちゃん」が登場します。
「1ページ目より最後のページの方が、主人公が成長していなければならない」という絵本のひとつの原則がよく分かる形で描かれています。
全体を通して、一つの「キーアイテム」としてとても上手に使われているのが、あさえの大事にしているお人形「ほっぺこちゃん」です。
幼稚園から帰ってきたあさえが、「ほっぺこちゃん」が部屋にないことに気がついて、
「また、あやちゃんの いたずらだ。
あやちゃん、あたしの ほっぺこちゃんを
かえしなさい!」
と大声をあげるところから始まります。
ところが、「あやちゃん」は具合が悪く、お母さんに背負われて病院へ行ってしまいます。
もうちょうの手術をすることになったのです。
最後にはこの「ほっぺこちゃん」をお見舞いとして病院へ持っていって、あやちゃんにあげてしまうことで、あさえの一晩の成長が表現されるわけですが、その不安な一日を乗り切るためのいろいろな場面に「ほっぺこちゃん」が登場するのです。
おともだちも帰ってしまって、ひとりでおとうさんの帰りを待つことになったあさえが、嵐が怖くてベッドにもぐりこむときも、「ほっぺこちゃん」と一緒です。
もぐりこんだ布団の隙間から、「ほっぺこちゃん」のお下げ髪の端っこだけのぞいています。
「おとうさんと、ふたりだけのゆうごはん」のときも、余った2つの椅子の一つに、「ほっぺこちゃん」が座っていて、ちゃんと前にほっぺこちゃんの分も、ごはんが用意されています。
不安なときはいつも頼りにしていた「ほっぺこちゃん」を手放すことで、あさえの成長は一層強く描かれることになります。
それから、いつも感心するのが林明子さんの描写力です。
「はっぱのおうち」でも書いた、表情や仕草はもちろん、背景となるリビングルームのほどよい生活感といい、あさえとお友達の「ひろちゃん」が遊んでいるときの、おもちゃにしているもののといい(そうそう、子供って、こういうその場にあるちぐはぐなもので、ちゃんと遊びを組み立てるんですよね)、あさえがあやちゃんのお見舞いのために折っている折り紙といい、、手紙を入れる封筒の模様といい、ほんとにリアリティ漂っています。
それから、部屋に置いてあるものも、状況を表すのに上手に使われています。
最初のページできちんとサイドテーブルに置かれていた民族衣装のお人形は、あさえとひろちゃんのおままごとに使われているし、窓際に置いてあったクマノミの置物は、「きゅうに、そらが くらくなりました。」という場面のときに、嵐の前触れの風に煽られたカーテンで、ソファに落ちています。
全てのページで矛盾がありません。これも昔編集さんに言われた鉄則です。
ただ、1983年という出版年に、今との時代の差を感じざるを得ません。
というのも、あさえはひろちゃんと「二人だけ」で幼稚園から帰ってくるし、お母さんはあさえとひろちゃんを「残して」病院へ行ってしまうし、ひろちゃんは雨が降りそうだからと、「ひとりで」帰っていってしまいます。
こんなこと、今の時代ではあり得ません。ウチの息子が幼稚園のころは、子供だけで帰ってくるなんて考えられなかったし、小学生になった今でも、行き帰り一人ということはありません。行きは集団登校だし、帰りは必ずお友達か親、または知り合いのおじさんと一緒です。
学校も子供を一人にすることに、とてもピリピリしています。
絵本だからこそ感じられる子供の生活環境の違いです。
また絵本だからこそできるおもしろい発見もあります。
あさえがあやちゃんの病院の玄関に立つ場面です。大きな病院の廊下の奥でジュースを買っている子をよーく見ると…なんと「はじめてのおつかい」に出てくる「みいちゃん」です!
同じく「はじめてのおつかい」でたばこを買っていく「めがねおじさん」も、松葉杖をついて、看護婦さん(今は看護士さんですね)にお薬か何かの説明をされています。
この筒井頼子&林明子シリーズには、こういうイタズラがたくさん隠れているんです。
探すのがとっても楽しいですよ。
え 林 明子
出版社 福音館書店
発行年月日 1983年2月1日
これも、「はじめてのおつかい」「あさえとちいさいいもうと」を描いた筒井頼子さんと林明子さんのコンビの作品。
「あさえとちいさいいもうと」の「あさえ」といもうとの「あやちゃん」が登場します。
「1ページ目より最後のページの方が、主人公が成長していなければならない」という絵本のひとつの原則がよく分かる形で描かれています。
全体を通して、一つの「キーアイテム」としてとても上手に使われているのが、あさえの大事にしているお人形「ほっぺこちゃん」です。
幼稚園から帰ってきたあさえが、「ほっぺこちゃん」が部屋にないことに気がついて、
「また、あやちゃんの いたずらだ。
あやちゃん、あたしの ほっぺこちゃんを
かえしなさい!」
と大声をあげるところから始まります。
ところが、「あやちゃん」は具合が悪く、お母さんに背負われて病院へ行ってしまいます。
もうちょうの手術をすることになったのです。
最後にはこの「ほっぺこちゃん」をお見舞いとして病院へ持っていって、あやちゃんにあげてしまうことで、あさえの一晩の成長が表現されるわけですが、その不安な一日を乗り切るためのいろいろな場面に「ほっぺこちゃん」が登場するのです。
おともだちも帰ってしまって、ひとりでおとうさんの帰りを待つことになったあさえが、嵐が怖くてベッドにもぐりこむときも、「ほっぺこちゃん」と一緒です。
もぐりこんだ布団の隙間から、「ほっぺこちゃん」のお下げ髪の端っこだけのぞいています。
「おとうさんと、ふたりだけのゆうごはん」のときも、余った2つの椅子の一つに、「ほっぺこちゃん」が座っていて、ちゃんと前にほっぺこちゃんの分も、ごはんが用意されています。
不安なときはいつも頼りにしていた「ほっぺこちゃん」を手放すことで、あさえの成長は一層強く描かれることになります。
それから、いつも感心するのが林明子さんの描写力です。
「はっぱのおうち」でも書いた、表情や仕草はもちろん、背景となるリビングルームのほどよい生活感といい、あさえとお友達の「ひろちゃん」が遊んでいるときの、おもちゃにしているもののといい(そうそう、子供って、こういうその場にあるちぐはぐなもので、ちゃんと遊びを組み立てるんですよね)、あさえがあやちゃんのお見舞いのために折っている折り紙といい、、手紙を入れる封筒の模様といい、ほんとにリアリティ漂っています。
それから、部屋に置いてあるものも、状況を表すのに上手に使われています。
最初のページできちんとサイドテーブルに置かれていた民族衣装のお人形は、あさえとひろちゃんのおままごとに使われているし、窓際に置いてあったクマノミの置物は、「きゅうに、そらが くらくなりました。」という場面のときに、嵐の前触れの風に煽られたカーテンで、ソファに落ちています。
全てのページで矛盾がありません。これも昔編集さんに言われた鉄則です。
ただ、1983年という出版年に、今との時代の差を感じざるを得ません。
というのも、あさえはひろちゃんと「二人だけ」で幼稚園から帰ってくるし、お母さんはあさえとひろちゃんを「残して」病院へ行ってしまうし、ひろちゃんは雨が降りそうだからと、「ひとりで」帰っていってしまいます。
こんなこと、今の時代ではあり得ません。ウチの息子が幼稚園のころは、子供だけで帰ってくるなんて考えられなかったし、小学生になった今でも、行き帰り一人ということはありません。行きは集団登校だし、帰りは必ずお友達か親、または知り合いのおじさんと一緒です。
学校も子供を一人にすることに、とてもピリピリしています。
絵本だからこそ感じられる子供の生活環境の違いです。
また絵本だからこそできるおもしろい発見もあります。
あさえがあやちゃんの病院の玄関に立つ場面です。大きな病院の廊下の奥でジュースを買っている子をよーく見ると…なんと「はじめてのおつかい」に出てくる「みいちゃん」です!
同じく「はじめてのおつかい」でたばこを買っていく「めがねおじさん」も、松葉杖をついて、看護婦さん(今は看護士さんですね)にお薬か何かの説明をされています。
この筒井頼子&林明子シリーズには、こういうイタズラがたくさん隠れているんです。
探すのがとっても楽しいですよ。


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